AIやロボットが
人と共存する社会を見据えて

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ビジネスソリューション事業

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人とロボットが協働して未来を築く

AI・ロボティクスに関わるチームが発足したのは2017年のこと。総務部の1グループで、わずか2名からのスタートだった。当時を振り返って、彼女はこう語る。
「えっ、私が?というのが正直な感想でした。でも、将来的な労働人口減少は目に見えていたのでビジョンは理解できましたし、商社としてユーザーさんとメーカーさんの間に入れば何か手助けができるんじゃないかと思いました」。
ロボットについては全くの専門外だった彼女だが、プロジェクトにおけるユーザー目線の重要性にはすぐに気づいた。開発に携わるメーカー側は持てる技術を駆使して最高品質のロボットを作ろうとしがちだが、ユーザーは必ずしもそれを求めているわけではない。ロボットを扱う人間がいるわけだから、人間の方が適性の高い業務まで対応させる必要はないのだ。
「ロボットだけで業務を完結させるのではなく、人とロボットが協働するという考え方を持つ必要があると思います」。

案内ロボットの実証実験を積み重ねて実導入へ

現在の職務は実証実験に関することが中心だ。クライアントから委託を受けて、その内容に応じてメーカーや現場と調整を進める。実験後には課題を洗い出してクライアントと共有する。
最初の実証実験は、AIを搭載した案内ロボットを駅構内に設置し、利用者がどのように活用しているかを調査するというものだった。2018年にスタートし、3年あまり続けられた。それによって得られた知見は少なくない。一例として、目的地までの経路が複雑な場合の対応が挙げられる。
「長々と案内をしても、お客さまはかえって理解が難しくなってしまいます。それでいろいろやってみた結果、まず右に行くのか左に行くのかさえわかれば、お客さまは目的地へ到達できるという結論になりました」。
こうして複数の駅で実証実験を積み重ねて改良を繰り返し、案内ロボットは2020年度末に実導入を果たした。

ロボットが活躍できる環境をつくる

また、高輪ゲートウェイ駅の非営業エリアでは、清掃や搬送、物流などを担うさまざまなロボットの実証実験が行われている。これらのロボットは構内を移動して業務を行うので、案内ロボットとは違った課題が出てくることになる。
「例えば、駅や商業施設はしばしばレイアウトの変更がありますが、今はその都度メーカーさんにマップを作り直してもらう必要があるので、効率化できるよう改善したいと考えています。このようにして高輪ゲートウェイ駅ではいろいろな課題を洗い出しています」。

成果をグループ外にも展開したい

彼女が関わる業務においても、新型コロナウイルス感染症の影響は甚大だった。しかし歩みを止めるつもりはない。
「緊急性がないので予算がつかないという状況はなかなか変わらないでしょうが、労働人口の減少も待ったなしです。ですから、先んじて準備しておかなければ、数十年後に置いていかれることになりかねません」。
一方、コロナ禍で改善されたこともあるという。非接触でのコミュニケーションが当たり前になり、多くの人が画面に向かって話すことに違和感を持たなくなった。ロボットが受け入れられる土壌が徐々に整ってきたと言えるだろう。その先には、AIとロボットが人と連携し、それぞれの長所を生かして活躍する時代がある。
「ロボットは現場で実証実験をしないと課題が見えてこないものですが、JR東日本グループには駅をはじめとするさまざまな実証実験の場があります。ノウハウや経験も蓄積されていきますから、将来的にはこれらを生かしてグループ外にもネットワークを広げていきたいと思っています」。