株式会社JR東日本商事

新幹線高架下のスペースを
レタス工場として活用

Business. 02
ビジネスソリューション事業

  1. HOME
  2. ビジネス事例
  3. 高架下をレタス工場に変える

既存の建物を利用して高品質のレタスを栽培

東北、上信越方面の新幹線と在来線が集結するジャンクション大宮駅の3kmほど北、東北新幹線の高架下に倉庫のような建物がひっそりとたたずんでいる。教えられない限り、ここがレタス工場だとは誰も思わないだろう。
「元は工事会社さんの物置で、重機などが置かれていたと聞いています」。
彼女はプロジェクトに立ち上げから関わってきた。植物工場というと大規模な生産施設を想像しがちだが、このような中小規模の工場を得意とする企業もある。今回パートナーとなったプランツラボラトリー株式会社はその中でも代表的な企業で、同社が東京大学と共同で開発した省エネ型屋内農場システム「PUTFARM」はスペースの有効活用にも長けている。
工場内の環境はレタス栽培に最適となるよう整えられているので、季節にかかわりなく種まきから35日で収穫できる。1日あたりの収穫量は最大700株ほどだ。
「工場での栽培なので虫がつきませんし、品質も均一にできます。柔らかくて苦味がないところも魅力です」。

多数の関係企業の間で調整に奔走した日々

初めてプランツラボラトリーを知ったのは勉強会の場だった。高架下の有効活用というJR東日本グループの課題とマッチしたことから、同社とコラボレーションしたプロジェクトがスタートした。
まずは土地を確保しなければならない。東京から近く新鮮な産物を短時間で輸送できる大宮周辺が候補として挙がったことから、JR東日本グループ関係各社に高架下活用の施策として提案し、各社の協力を得て計画を進めた。そして、条件等の交渉や作物の選定を経て、この場所をレタス工場にすることになった。
関係各社や現地に足繫く通い、関係する多くの会社の間に立って調整に尽力した。プロジェクトが立ち上がってから工場の概要が確定するまでに、およそ1年半を要した。
「当社の立場はリース担当ですが、役割としてはマッチングの方がはるかに大きかったですね」。

コロナ禍の中で開業を迎える

ようやく開業の見通しが立ちつつあった2020年春、プロジェクトチームの前に新型コロナウイルスが立ちふさがる。
「海外から輸入する機材が入ってこないので、設備が整わなくなってしまいました。そのうえ、このような状況では販売先として想定していた飲食店やホテルへの営業もできません。暗礁に乗り上げたように思いました」。
なんとか機材は調達でき、当初の予定より1か月ほど遅れたものの開業にこぎつけることができた。規模は当初の予定よりも縮小せざるを得なかったが、夏前には初めての収穫を迎えた。この時の感慨を、こう振り返る。
「実際に栽培していたのは35日ですが、2年半かかってできたレタスのような気がしました」。
とはいえ、コロナ禍による飲食産業の不振は変わらない。ゆえに、新たな販路を探すかたわら、JR東日本商事が運営する「のものマルシェ」や「のものPOP-UP STORE」で販売したり、社内販売を行ったりして認知度向上に努めた。1年あまりが経った現在は、首都圏の大手スーパーチェーンや飲食店に卸されている。

鉄道関連にこだわらず、新しいチャレンジをしたい

種まきや収穫など、工場での栽培は人の手で行われる。けっして難しい作業ではないことから、人材活用の面でも有意義なプロジェクトといえるだろう。
「高齢の方や障がいをお持ちの方など、多様な人材が活躍できる可能性を秘めていると思います」。
また、彼女はAI・ロボティクスの担当も兼任し、案内ロボットの営業・販売にも携わっている。レタス工場と同様に最先端の商材ではあるが、仕事としてはアナログで地味な業務のウェイトが大きいという。
「JR東日本グループにはさまざまな資産があります。土地やツールだけでなく、実証実験の経験も資産と言えるでしょう。今後は、これらをグループ外のお客さまとつなぐ、結びつけていく仕事に取り組んでいきたいと思っています」。
時代に即した新しい価値を生み出すために、これからも地道にマッチングを続けていく。